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第44回日本SF大会「HAMACON2」『MS IGLOO』上映イベントレポート

〜愛と涙と努力のSF大会〜

 2005年7月17日(日)パシフィコ横浜にて開催された第44回日本SF大会「HAMACON2」において、『機動戦士ガンダム MS IGLOO 1年戦争秘録』第2話「遠吠えは落日に染まった」の特別上映会&トークセッションが行われた
 SF大会とはSFファンによって運営され、媒体やメディア、ファンを問わない形で、SFやファンタジーを題材にした小説、マンガ、アニメなどの作品やクリエイターについて、時にはそのクリエイターも交えて語り合うという長い歴史を持つイベントである。つまり、ここには日本で有数の”目の肥えた”人々が集まる場なのだ。
 当初の開場予定は10時だったが、機材トラブルのため上映スケジュールが、急遽13時15分に順延。その他のイベントの予定も合わせて、スケジュールが大幅に変更される形でスタートすることとなった。
 13時15分になり、ステージ上に出演者が登場し、トークセッションからスタート。
 当初の予定では、アニメ評論家の氷川竜介氏が司会を担当し、監督の今西隆志氏、スーパーバイザーの出渕裕氏によるトークセッションが行われるはずだったが、舞台には今西監督は現れず、代わりに『MS IGLOO』の大ファンであり、月刊ガンダムエース(角川書店)誌上にて、『MS IGLOO』のエッセイマンガを発表している漫画家の徳光康之氏が登場することとなった。
◆思わぬ話も飛びだした トークショー
 トークセッションは、主に出渕裕氏が『MS IGLOO』の誕生までの経緯や、作品に込めた思い、メカデザイナー陣とのやりとりや各話誕生にまつわる裏話を披露。『MS IGLOO』に登場するジオン軍の秘密兵器が、第二次大戦中のドイツの兵器開発をヒントにしていることや、デザイナー間で担当デザインを交換した話、さらにはとんでもない話がポロリと出るなど、会場は大いに盛り上がった。
 一方、徳光康之氏は、エッセイマンガで描いている雰囲気そのままに、得意のジオン大好き妄想モードを爆発。『MS IGLOO』がジオンの戦時フィルムに忠実に作られたに違いない説、テレビ版ガンダムのストーリーは、連邦軍がねつ造した物語説など、ジオン好きを代表する発言を連発する。その勢いは、出渕裕氏の妄想にも火をつけ、即興で自分好みの『MS IGLOO』最終決戦を披露するノリに、会場全体は大爆笑となった。
 トークセッションの開始から30分ほどが経過し、今西監督がようやくステージに登場。上映が遅れた理由の説明をしつつ、トークセッションにはほんの少しだけ参加。
 「秘密兵器は、遅れて到着するものなんです。ギリギリのところで真打ち登場という感じですかね」
 この出渕氏の絶妙なコメントによって、トークセッションは終了。ようやく、本編の上映となった。さらに、本編上映後には、『MS IGLOO』の第1話から第3話までのストーリーと映像がダイジェストでまとめられたプロモーション映像も特別上映された。
 ちなみに、会場は1000人を収容できる大型ホールで、バンダイミュージアム内で『MS IGLOO』を上映していた「シアターB-One」の倍近い大きさのスクリーンを使用。さらに画像はハイビジョン対応のものが上映された。つまり『MS IGLOO』の上映の中では、最も環境の整った貴重な上映でもあったことを付け加えておこう。
氷川竜介氏氷川竜介氏
「この作品は、3DフルCGでキャラクターもメカも描ききり、科学考証もきちんとした点で、ガンダムという以前に国産SF短編映像として貴重な存在だと思います」

徳光康之氏徳光康之氏
「ジオンオヤジ主義の人間が見たかったガンダム作品ですよ。ある意味、オレのために作ってくれた作品なのかと思いましたよ。ジオン好きでオヤジ好きは、燃えまくりで、確実に泣きますからね!」

出渕裕氏出渕裕氏
「秘密兵器開発物語的な側面もある、“負けていく『プロジェクトX』”とも言えますね。そして、この作品は、ジオンが善、連邦が悪という“勧善懲悪”が徹底しているんです」


★特別付録★実録 横浜輸送大作戦
〜上映スケジュール変更の裏に何があったのか〜
 さて、トークセッションに登場する予定でありながら、後半にわずかに参加する形となった今西監督は何をしていたのか? そして、上映が遅れた舞台裏では何があったのか? その顛末をレポートして行こう。

 当日10時にイベント開始予定だっため、9時頃に現地入りしていたスタッフはさっそく機材チェックを行った。
 そして、思いもしない悲劇が訪れる。
 なんと使用するはずの上映機材にトラブルがあることが判明したのだ。
 もう上映まで1時間もない。あわてたスタッフは急遽代わりの機材を調達すべく、横浜界隈の映像機材のレンタル会社をあたるも、運悪く土曜日であるため調達が不可能。


「上映中止」

この言葉が現場のすべての人間の頭をよぎった。
 ただ一人あきらめない男がいた。
 監督である今西隆志だった。
 「サンライズD.I.Dから機材を持ってこよう」
東京、上井草のサンライズD.I.Dから陸送しようと言うのだ。しかし、これには少なく見積もっても2時間は必要だった。
 もはや万策尽きようとしている所に朗報が入った。
 「イベントの時間を調整すれば、1時15分からならば上映が可能です!」
 当日SF大会に参加していた『MS IGLOO』で設定考証を担当する永瀬唯氏が、プロデューサーである井上幸一氏に協力する形で、SF大会の実行委員会との交渉に成功したのだ。恐るべし『MS IGLOO』の人脈。
 ここに、30キロを超える一大陸送作戦が展開されることとなった。
 この日、不眠不休の不夜城として知られるサンライズD.I.Dとそのスタッフたちは、珍しくつかの間の休息を得ていた。
 各々が自宅で久しぶりのリラックスした時間(=つまり寝ていたのだが)を過ごしていた時に今西監督から緊急入電が入る。
「シキュウD.I.Dニシュウゴウセヨ」
 しかし、これからが本当の戦いだった。
 上井草から会場であるパシフィコ横浜のある「みなとみらい」へは、電車を使用して90分程度。11時半に出ればギリギリ間に合う。しかし機材は大型のため、車を使って運搬しなければならない。
 日曜の昼前、しかも「24時間混雑道路」と呼ばれる環状八号線内回りを経て、当日花火大会のため交通規制が予定されていたていた一大行楽地「みなとみらい」へ。運が悪ければ3時間はかかるまさに”地獄の決死大作戦”であった。
 あにはからんや、午後1時に到着予定の機材は土曜日の渋滞に飲み込まれ、予定から10分が過ぎてもその姿を現すことはなかった。会場と道路を何度も往復する井上プロデューサー。「やっぱり上映は不可能なのか?」誰もがあきらめかけた時、輸送隊より入電が入る。
「ワレ、ゲンザイヨコハマナリ」
 ここから逆転に向けた最後の戦いが始まった。
 まずは時間稼ぎだった。本来上映前後に予定されていたトークセッションを前倒しでスタートした。ただし、今西監督は到着と同時に機材のセッティングの指揮をとらねばならないため、途中参加予定であった徳光氏に最初からトークセッションに加わってもらうという進行となった。
「機材はまだか!」
 怒号が飛び交う楽屋。まさに命運尽き果てたかと思われる瞬間

これが今回使用したHDW-M2000。
427x194x544mm(幅/高さ/奥行き)重量23Kgと、
持ち運びは困難な機材。
「到着しました!」
 今西監督はその知らせを聞くや機材を積んだ車を迎えに行くべく走り出す。13時42分のことだった。
 一方トーク部隊も過酷な戦いを強いられていた。ただでさえ最初は30分程度の予定が大幅に延びていたのに、話をさらに引き延ばさねばならなかったのだ。しかし、結果的には、そのことにより様々な予定外のこぼれ話が飛び出し、訪れていた観客たちに恩恵をもたらすこととなった。
 そして13時45分、ついに機材が現地入り。すぐさまセッティングが行われ、最終設定を他のスタッフにまかせる形で、ようやく今西監督が舞台に立った。
 拍手で迎える観客。誰もがこれで大団円となることを感じていた。
 しかし、今西監督はじめスタッフたちにとってはこれからが正念場だった。
「果たしてテストなしで大丈夫なのか」
 機材が素早く接続され、13時50分、ついに上映が開始される。

 一発勝負の危険な賭けの幕切れは実にあっけないものだった。
 上映はトラブルもなく無事終了。拍手の渦が溢れた。
 ここにSF大会における『MS IGLOO』の特別上映会は終了した。
 しかし、その陰には今西監督をはじめとする『MS IGLOO』スタッフの決死の輸送作戦、SF大会実行委員会による懸命の時間調整、そして出渕氏、徳光氏、氷川氏によるトーク引き延ばし作戦など、様々な人たちの努力があったことを忘れるべきではないだろう。
 そして、観客にとっては結果的には予定外のハイビジョン上映と思わぬこぼれ話を聞くことが出来るというプレゼントもあった。まさに「災い転じて福と成す」である。
 すべてが終わった後、輸送作戦を実施した『MS IGLOO』のスタッフは言った。
「上映が終わった後食べた横浜名物・崎陽軒のシウマイ弁当の味は一生忘れないでしょう」
そして、今日もサンライズD.I.Dは戦い続けている。603のように。


(C)SOTSU AGENCY / SUNRISE