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Interview

今西隆志氏
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打ち上げレポート



今西隆志氏
 ジオンの秘密兵器とそれにまつわる人間ドラマを、迫真のフルCGで描く『MS IGLOO』。だが同時に、最新テクノロジーを駆使して再構築された映像には、25年に渡って熟成された旧き良き「宇宙世紀の香り」も濃密に漂っている。第一回スタッフインタビューでは、ファンのツボを外さないその絶妙な匙加減の秘密を、監督である今西隆志氏に聞いた。(文中敬称略)

ガンダム世界を「掘り下げずにいられない」
ベテランデザイナー陣の見せる解像度

――現在1話と2話が公開中ですが、手応えはいかがですか?
今西:あり難いことに、今のところ1話と2話を観て「もう3話なんか観ない!」っていう人はいないですね。で、そういう人に「どこが気に入った?」って訊くと、みんな言うことがバラバラで。僕らとしても「どこが見どころか?」って聞かれれば「全部!」って言えるぐらいの自負はあるから、本当に嬉しいです。
 それと、未だに雑誌なんかだと勘違いして“短編映像”と紹介されることがありますが(苦笑)、内容的には30分モノの物語ですから。面白さのポイントやテイストの点で、ゲームのムービーとはまた違った新鮮味があると思います。

――やはり、CGでリファインされた艦船やMSも、見どころのひとつではありますよね?
ルウム戦役を舞台にした1話では、ファースト・ガンダム本編では目立たなかった船もカッコよく描かれてます。
今西:その点では、メカデザイナー陣の尽力にも負うところが大きいですね。例えばカトキさんはプラモデルの監修なんかもなさるし、もともと立体感覚に秀でてる方なんですよ。ずっとガンダム世界に興味を持ってきた人だから、以前からあたためていたものがあらかじめあったんでしょう。それに手を加える形で、2、3日でデザインを上げてくれました。手書きのアニメーションでは「線が多すぎる」とかの制約でブレーキ踏まざるを得なかった部分を、思い切り出してくれたんです。おかげでムサイなんか、キライな人も多かったらしいんだけど「今回ので好きになりました」って声もあって「よしよし!」と(笑)。
 カトキさんだけじゃなく、出渕さんも藤岡さんも荒牧さんも、もはやガンダム世界に関して細かく掘り下げずにいられない人たちじゃないですか。出渕さんなんか、自分でリファインしたノーマルスーツのCGにまで、すごく感心してましたよ。ヘルメットのアップとか、セルだとどうしてもペタっとした感じになっちゃうんだけど、CGだと本当の立体感があって「ああ、こう見えるのか」って。
 それと、今回の僕の表現方針として「少しアナクロニズムを入れるんだ」っていうのがあったんです。あのノーマルスーツにしても、ヘルメットとか映画の『ライトスタッフ』かと思うでしょ?(笑)そのへんの感覚を「ああ、あの服ですね」で解ってもらえる人たちだから、いい形で転がせたんだと思います。もっとも荒牧さんなんか、最初の打ち合わせでは困ってたけどね。「アナクロだからカッコよくしないで下さい」って言ったら「いや、普通はカッコよくしてくださいでしょ?」って。
 でもその「カッコよさ」って言葉のニュアンスは、1話と2話を観てもらえば解ると思うんですよ。今風のスマートなロボットがカンフーばりのアクションを見せるんじゃなく、2話のザクなんか、ただ銃持ってドスンドスン走ってるだけで。それをカッコイイって言うのかどうかはともかく、結局「何してるのか」が面白いって話ですからね。その点、荒牧さんは自分でも監督やる人だから、勘どころをすぐに理解してくれました。あ、そういえば今回のスタッフ、監督経験者だらけだな。

――確かにスタッフはベテラン揃いですよね。
今西:年寄りとも言いいますが(笑)。だから、ゲストで出てくるおっさんキャラクターの気持ちとか雰囲気とかもすぐにに解って、打ち合わせが早かった(笑)CGにしても、オッサンの顔は質感をなるべく出すようにしました。

不合理なほうが面白い?
ハイテクに迎合しない宇宙世紀のアナクロニズム

――でも、そもそもなんでアナクロじゃなきゃダメなんです?
今西:僕の持論としてはメカを扱う限り、合理的精神で描いちゃ面白くもおかしくもないんですよ。例えば合理性を持たせようとした演出としては、モニターにそのメカのスゴいデータを羅列して見せたりしますよね? 「どんな武器なのか」っていう説明のシーンは確かに必要だけど、演出家としてはそのスゴさって、文字や口で言っちゃイカンでしょ。むしろそういうのをブッ飛ばすぐらい、不条理の塊みたいなほうが、機械っていうのは面白い。いまの電子制御の高級車より、どちらかと言えばミニ・クーパーやジープみたいなノリですね。それはメカの発想だけじゃなくて、登場人物の考え方も作品のテイストも、ちょっと時代とズレた感じ。だから主人公のマイ中尉をはじめ、出てくるキャラクターもあんまり論理的じゃないんです。

――「戦争」という意味で言えば、現代のようなハイテク兵器が全自動で戦うそれではなくて、1次大戦や2次大戦ぐらいの雰囲気ですよね。実際、ヨルムンガンドみたいな巨大宇宙砲でも、イイ顔のおっさんが宇宙で照準器覗いてると「あ、コイツが戦ってるんだ」って思えますし。
今西:まあ、やろうと思えば今風にもできるんですよ。でも、映像追尾式のミサイルとか出して果たして面白いのか。形状をロックオンしたらどんどん追っかけてっちゃうから、もうミノフスキー粒子とか全然関係ない(笑)。一年戦争は79年放映の『機動戦士ガンダム』の世界なんですから、そこに出現する新兵器も、現代の我々から見たら古臭く見えないと。だから扱ってる人もちょっとアナクロに「撃ち方はじめ!」って言わないとイカンし、ムサイのビーム砲からは火花が散らねばイカンのです。そこで「ファイアー!」ってキレイな光線撃っちゃったら、積み上げた何かがガラガラと崩れてしまう。恐らくファンの皆さんも、それを求めてないと思うんですよ。

――物語のテーマからして「ジオンの秘密兵器」ですもんね(笑)。そういう「お約束」と言うか、「解ってらっしゃる!」感も含め、やはりコアなファンの方々に観て欲しい作品ではあると?
今西:画面を観てるぶんには誰でも楽しめる作品にはなっていると思いますが、やはりコアなファンの方には「とにかくまずは観に来てくれ!」と。なんか松戸ってさ、東京近郊の人にすら「すごく遠いとこ」って誤解されてるんですよ。1時間あれば行けるのに。もういっそ「8時間かかっても!」ぐらいのつもりで観に来て欲しいですよね。そう思えば大阪からだって観に来れるじゃない!(笑)



(C)SOTSU AGENCY / SUNRISE