出渕:『MS IGLOO』は、作品として実験兵器モノの側面が強いですよね。作品タイトルに“MS”って付いているし、どちらにしてもモビルスーツは出さざるを得ないだろうという話は、企画当初からありました。
では、「どのタイミングで登場させるか」というのは最初から考えていたわけではなく、1話が大砲、2話が戦車と来たので、次はモビルスーツかなということになりまして。ただし、やっぱり1年戦争に新規のモビルスーツは出し難いんですよ。新しい量産型モビルスーツを出すと、その時点でウソになっちゃいますから。でも、作品のコンセプトである実験機や試験機としてなら、登場させられる可能性はあるだろうと。でも、単に新型機を考えると、例えばドムと競合した機体があったとか、ギャンとゲルググが次期量産型として争った時にもう1機種存在した……なんていうのは、予定調和でつまらないですよね。
そこで発想の大元になったのが、第二次世界大戦のドイツで実際にあったメッサーシュミット社のBf109とハインケル社のHe100との戦闘機の軍への制式化競争の話なんです。ハインケル社がナチ嫌いで、メッサーシュミット社がナチスに取り入っていて、その結果、最終的にBf109が制式採用される。でも、性能的にはHe100の方が性能が上だったという話もあると。ガンダムは、戦記ものや開発史の側面もあって、そうした部分を今回クローズアップしていくスタイルを採っているんです。だから、『MS
IGLOO』という作品に説得力を持たせられるなら、こうしたシチュエーションも積極的に取り入れていこうと思ったわけです。
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