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Interview

デジタル制作部:柴田英樹氏×瓶子英波氏×ガンダム事業部:中島幸治氏
柴田英樹氏×瓶子英波氏×中島幸治氏恒例の『MS IGLOO』スペシャルインタビュー、第22回となる今回は、その制作に現場レベルで関わった3人のスタッフが登場! デジタル制作部の柴田英樹氏と瓶子英波(へいしえば)氏、そしてガンダム事業部ライツプロモートチームの中島幸治氏だ。かつてない試みが満載の『IGLOO』という戦場で、最前線に身を投じたお三方の知られざる苦闘。そして現場スタッフだから話せる、抱腹絶倒のスレスレトーク! 大いに頷き、かつ笑いながらお楽しみ頂こう!

CGモデリング完成秘話
博多の夜はアツかった……!?

-------まず自己紹介がてら、『MS IGLOO』での皆さんのお仕事を教えてください。
柴田:デジタル制作部の柴田です。『IGLOO』では制作デスクと制作担当という肩書きです。具体的には今西プロデューサーのフォローと、現場制作陣の取りまとめが仕事になります。
瓶子:設定制作の瓶子です。今回はデザイナーさんにデザインを描いて頂いて、3Dモデルが動かせるようになるまでを追っかけてきました。
中島:ガンダム事業部ライツプロモートチームの中島です。『MS IGLOO』シリーズの広報を担当しています。
-------なんか、皆さんお仕事は三者三様なんですね?(お三方、頷く)じゃあ、企画の立ち上げから順を追っていくと、最初に実作業に入ったのはどなたなんですか?
柴田:普通は企画と平行して、制作がスタッフィングなどを検討しますが、今回は今西、井上両プロデューサーがスタッフを決めていたので、企画当初の僕はそれほど忙しくなかったですね。むしろシナリオやコンテに入るまえの、デザインとモデリングが大変だったんじゃないでしょうか。
瓶子:つまり、あたし?(笑)
-------瓶子さんは、いつどんな作業からはじめられたんです?
瓶子英波氏瓶子:柴田くんが言うとおり、デザイン作業からです。ただ、なにしろ『IGLOO』はCG作品ですから、デザイナーさんから設定画が上がってきたあと、それを3Dでモデリングする作業が必要になるんですよ。なかでも今回特殊だったのは、キャラクターがCGだったことですね。しかもアニメ体形じゃなくリアルなプロポーションの人間が欲しかったんで、今までやってきた手法が使えなかったんです。それで結局「こりゃ生身の人間の3Dデータを取らなきゃイカン! それも外人さんじゃなきゃダメ!」ということになって。ところが、全身まるまるの3Dデータを取るスキャン機材を持つスタジオは博多にしかなかったんで、監督以下スタッフ一同が博多に飛ぶことになりました。博多を中心に活動している外国人モデルさんのデータを、最終的に20数人ぶんぐらいは取ったかな? それが、『一年戦争秘録』公開の10ヶ月まえだったと思います。
柴田:あれ、大変だったよね。軍人姿のCGモデルが欲しかったから、スキャンの際、旧ドイツ軍の軍服着てもらって。
瓶子:身体のラインのデータも欲しかったんで、タックトップにショートパンツに水泳帽みたいな、「モデルさんになんちゅー格好を!」っていう姿でもスキャンしましたしね。しかもそれが、2泊3日の強行軍だったんですよ! 最後には監督も変なテンションになっちゃって「意地でも博多ラーメンは食って帰るぞ!」とか言ってたし(笑)。
-------なんかそれ、いわゆる普通の「設定制作」のお仕事とは、全然違いません?
柴田:そうですね。通常、設定制作は、シナリオやデザインの発注が主な仕事になるんですが、『IGLOO』では今西さんや出渕さんがストーリーと設定を仕切っていましたから。
瓶子:むしろ私たちは、それとは違う部分をフォローする役目だったんです。その最たるものが、いま言ったような「CGを作る材料を揃える作業」だったと。もちろん、キャラクターのモデリングが出来上がったあとのモーションキャプチャーなんかも苦労の連続でしたよ。「このスタジオの広さだと、まずコレ撮ってアレ撮って……」とか、「ブリッジは2分割して撮るのが良い!」とか。ぜんぶ現場で学んでいったようなものです。
柴田:とにかく『IGLOO』は、作品の仕様そのものが「初めてづくし」ですからね。瓶子さんたちがそうやって悪戦苦闘してるあいだ、制作も喧喧諤諤でしたよ。やりたいことを並べて「これホントにできるの?」とか「予算はいくらかかるの?」とか、「スケジュールに納まるのか?」とか。
瓶子:柴田くんたちが今西さんと相談して、いざ作戦が決まったら、遂行するのが我々って感じですよね。
-------しかしそうなると、柴田さん的には冒険ばっかで怖くありませんでした?
柴田英樹氏柴田:ガンダム作品で「リアルな質感のCG作品で、ジオン側が主役の1年戦争モノ」というのは初めてでしたからね。正直「これがコケたら、もうCGでガンダム作品は出来ないじゃん!」っていう怖さはありました。しかし今西監督は「いけそうだから、やってみよう!」と。もちろん私は「いや、それは危ないから!」って押しとどめなきゃいけない役目でもあるんですが(笑)、今西さんや出渕さんはじめ、クリエイターさんの情熱がすごかったんですよ。その情熱を制作側の都合で「技術的に難しいからヤメましょう」とか、「手間がかかるんでヤメましょう」とか、まして「デザインが間に合わなそうだからあきらめましょう」とかは「絶対言えないな」と(笑)。逆に周りも一丸となって「なんとかやってやろう!」っていうムードがあったから、こういう作品に仕上がったんでしょう。その想いは、フィルムにも色濃く残ってると思いますよ。
-------しかも、毎回クオリティは上がってますもんね。
中島:『黙示録0079』一話とか、ジャブローの景色がスゴかったですよね!
瓶子:雲とか水とかは、CGだとホントに難しいんです。CGのスタッフが頑張ってくれたからイイ出来になりましたけど、柴田くんたちは逆に大変だったみたいですね。現場は自分の担当しか見えてないことが多くて、しかもポジティブに暴走しがちですから、「そこ力入れてもそんなに見えないから! ほどほどにして次のカットやって!」って(笑)。
柴田:おかげでバンダイビジュアルさんは、すごくハラハラしてました(笑)。
瓶子:でも、こんなに何も言わないのも珍しいですよ。すごく信用していただいて、現場はやりやすかったです。
柴田:バンダイビジュアルの久保プロデューサーから変更の要望が来たのは、タイトルだけでしたもんね。「タイトルに『機動戦士ガンダム』の一言は絶対入れて下さい」って(笑)。

一丸となって戦った
『IGLOO』知名度アップ大作戦

-------一方その頃、広報の中島さんは、まだ余裕があったワケですか?
中島幸治氏中島:はい。僕がサンライズに入社したのは03年の9月なんですけど、声をかけられたのはそれから半年後ぐらいです。だから僕、ぶっちゃけ広報担当として本格的に受け持ったのは、『IGLOO』が初めてなんですよ。上司から「中島くん、バンダイミュージアム行ったことある?」って言われて、「あります」って答えたら「じゃあ『IGLOO』担当ね!」って(笑)。しかもなんと、あの今西監督の作品だって言うじゃないですか! 実は僕、高校生の頃から今西作品のファンだったんです。おかげでもう「草野球デビューの直後に大リーガーとチーム組まされた」状態ですよ(笑)。「ホントに僕なんかでいいの?」って、ムチャクチャ緊張しましたね。
瓶子:作品の中身にも、すごく驚いてなかった? 最初にCGを見たとき「おぉ、なんスかコレ!?」って、叫んでたよね?(笑)
中島:だって2D設定を見てなくて、いきなり3D画像を見せられたんですから、そりゃ驚きますって! その驚きを大事にしたくて、雑誌の記事とかでも2Dの設定画はあまり出してないんです。
瓶子:本当はカトキさんの描いた2Dの設定画とか、すごい描き込みなんですけどね。
中島:そうなんですよ。だから個人的には、いろんな素材をお見せしたいんです! でも、それだけ見ちゃうと普通のアニメと変わらない印象を持たれちゃいますから、作品のためにならないと。そのへんは各スタッフと細かく連絡をとって、心配性なぐらい気を使いました。
-------ほかに、コミックや小説などのスピンオフもありますよね?
中島:あれは、こちらからオファーさせていただいた企画です。最初はコミック版だったんですが、当時すでに『一年戦争秘録』の限定上映から3ヶ月ぐらい経っていて、そろそろ『IGLOO』の認知度を上げるために「次の一手」が欲しかったんですよ。そしたら丁度『ガンダムエース』さんでも一年戦争モノのコンテンツを欲しがっていらしたんで、連載が決まったと。
瓶子:やはり松戸限定の上映形態では、『IGLOO』という作品があることすら知らない人もいたんですよね。そこで、認知度を上げて「じゃあ観に行ってみようか?」という人を増やすために、「できるコトは全部やろうよ!」って。
中島:あれだけのクオリティの作品を、限られた人しか知らないっていうのが、個人的にも「もったいないな」と思いましたし。ぶっちゃけ、みんなに教えてあげたかったというのが本音です。
-------美しい話ですねぇ〜。
中島:いや、でもですね! そういう作戦を遂行していたのが、よりによってこの僕ですから! いまだにアニメの作り方とか、よく解ってない部分もあるのにさ(笑)。
瓶子:それを言ったらあたしだって、編集さんと打ち合わせに行って、ご挨拶したあと「で、このあとどう話を進めればいいんだろう?」って(笑)。むしろみんな初めてだったから、いろいろ相談し合えた部分もあったんじゃないかな。
中島:それと、やっぱり今西監督の助けが大きかったですよね。実はあんなに面倒見のいい人、そんなにいないんじゃないですか?
瓶子:今西さん、よく言ってましたもんね。「失敗しても命まで取られるワケじゃなし、絶対見捨てたりはしないから安心してやってこーい!!」って。まあ、そう言われてもドキドキするのは同じなんだけど(笑)。
柴田:今西さんは雑誌に載る細かい記事まで全部チェックしてますしね。ポスターのレイアウトも監督が切っています。現在、デジタル制作部の部長も兼任してますが、やはり現場でぜんぶ目を通したいっていうタイプなんですよ。ディレクターとはそういう職種だし、そうじゃなきゃ務まらないですから。
瓶子:でも「自分のパートのコトは自分でできるようになれ!」とも言うよね〜(笑)。矛盾してるワケじゃなく、「それぐらい育てよ」って意味なんですけど。
中島:そういう面では、本当にいろいろ教えられたし、助けられましたね。

やっぱり濃いぃ?
『IGLOO』スタッフの日常会話

-------じゃあ中島さん的には、「憧れの人と一緒に仕事した手応え」みたいなモノは、充分感じていらっしゃると?
中島:いやホント、こんなにスゴイ人たちとお仕事させてもらうなんて、夢にも思いませんでしたから。出渕さんにしても、最初にお会いした時「『ダイナマン』のダークナイトをデザインした人だ!」とか思ったもん(笑)。
瓶子:しかも皆さん本当に気さくな人で、すごく良くしてもらってて。ただ、今西さんも出渕さんもさぁ、知識が濃すぎてついて行けないんですよ! アメリカの戦車がどうでこうでとか。
-------アレ? 噂では、瓶子さんは結構ミリタリー話にもついていってるって聞きましたが?
瓶子:それは勉強したからですよぉ! 今西さんに「覚えるのが遅い!」とか怒られながら。「お前はそれはこないだ観たろ〜」「ああ『バルジ大作戦』ね、ハイハイ」みたいな(笑)。おかげで「あの映画、ドラム缶で戦車を倒すのはどうですかね?」とか普通に言うようになっちゃったんですけど、そしたら当の今西さんと出渕さんが「ヘンなヤツ〜」とか言うしさ!(一同爆笑)
中島:でも、クリエイターの皆さんとお話ししてると、自分の知らないコトを沢山吸収できるから、すごく楽しいですよ。まあ、知ってても人生にはまったく役に立たないコトばっかですけど(笑)
瓶子:そうそう! 「スプリッター迷彩」が何なのかなんて、知っててもぜっんぜん役に立たないよね!(笑)だけどこの作品では、そういう知識が高いレベルで要求されるんです。だから、たぶんウチらだって、一般の人に混じったら相当「濃いぃ」ハズですよ。
中島:まあねぇ……「百式のビームサーベルの色は黄色だ!」とか、フツウ即答できないよね。
瓶子:だからさ、たまに飲み屋さんとかで、マニアと思しき人たちがガンダム話してると、気になってしょうがないの! 「あなたの言ってるその設定、間違ってるから!」って(笑)。
柴田:おもちゃ屋さんで、担当した作品のプラモデルを見て「ここまでが大変だったよなぁ」とか、感慨にふけっちゃいますもんね。もう職業病ですよ、コレは。

ガンダムの未来をかけた
試験隊の果てしなき戦い

瓶子:でも、そんな濃いぃクリエイターさんたちも、出来上がりはすごく喜んでくれて。その時は本当に「よかったなぁ」と思いましたよね。
中島:それと、僕はこういう作品がガンダムで出来たっていうコトが、すごく嬉しいです。「Vアンテナなんかなくたって、ガンダムはできんじゃんよ!」って言うか?(笑)『一年戦争秘録』の艦隊戦なんか、本当にすごかったし。
柴田:そのへんは中島さん、ファンの皆さんに一番近いもんね。
-------そうなんですか?
瓶子:ナイショにしてるみたいですけど、実はこの人、すっごいマニアなんです。
中島:『ギレンの野望』と『ジオンの系譜』は、10回ずつクリアしました!
-------いやそれ、「僕なんか」どころか、魂的にはメッチャ適任じゃないですか!(笑)
瓶子:確かに中島さんだけじゃなく、『IGLOO』にはそういう人材が多いのかも。
柴田:クリエイターさんはじめ、いろんなご縁で適材適所のスタッフが集まってるんですよね。それは今西監督の求心力もあると思うし。
瓶子:監督が口癖のように言うのは、「限界ギリギリまでいいもの作らなきゃ!」ですからね。「商業作品だから好きなだけじゃダメだけど、でも好きじゃなきゃ出来ないし、そのなかでバランスとってイイモノ見せなきゃね。待っててくれる人がいるんだから」って。それでみんなついて行く、不思議な人なんです。もちろんそれぞれの持ち場では苦労の連続なんですが、みんなが試行錯誤して、一個一個ハードルを越えてるというか。その意味では、スタッフはじめ関わって下さってる人たち全部が、もう「第603技術試験隊」そのものですよ(笑)。
柴田:その結果として、ファンの皆さんに支持して頂けていますしね。この「試験隊精神」は、ぜひとも次の作品に受け継いで行きたいですね。



(C)SOTSU AGENCY / SUNRISE