-------まず自己紹介がてら、『MS
IGLOO』での皆さんのお仕事を教えてください。 |
柴田:デジタル制作部の柴田です。『IGLOO』では制作デスクと制作担当という肩書きです。具体的には今西プロデューサーのフォローと、現場制作陣の取りまとめが仕事になります。
瓶子:設定制作の瓶子です。今回はデザイナーさんにデザインを描いて頂いて、3Dモデルが動かせるようになるまでを追っかけてきました。
中島:ガンダム事業部ライツプロモートチームの中島です。『MS
IGLOO』シリーズの広報を担当しています。 |
-------なんか、皆さんお仕事は三者三様なんですね?(お三方、頷く)じゃあ、企画の立ち上げから順を追っていくと、最初に実作業に入ったのはどなたなんですか? |
柴田:普通は企画と平行して、制作がスタッフィングなどを検討しますが、今回は今西、井上両プロデューサーがスタッフを決めていたので、企画当初の僕はそれほど忙しくなかったですね。むしろシナリオやコンテに入るまえの、デザインとモデリングが大変だったんじゃないでしょうか。
瓶子:つまり、あたし?(笑) |
-------瓶子さんは、いつどんな作業からはじめられたんです? |
瓶子:柴田くんが言うとおり、デザイン作業からです。ただ、なにしろ『IGLOO』はCG作品ですから、デザイナーさんから設定画が上がってきたあと、それを3Dでモデリングする作業が必要になるんですよ。なかでも今回特殊だったのは、キャラクターがCGだったことですね。しかもアニメ体形じゃなくリアルなプロポーションの人間が欲しかったんで、今までやってきた手法が使えなかったんです。それで結局「こりゃ生身の人間の3Dデータを取らなきゃイカン! それも外人さんじゃなきゃダメ!」ということになって。ところが、全身まるまるの3Dデータを取るスキャン機材を持つスタジオは博多にしかなかったんで、監督以下スタッフ一同が博多に飛ぶことになりました。博多を中心に活動している外国人モデルさんのデータを、最終的に20数人ぶんぐらいは取ったかな? それが、『一年戦争秘録』公開の10ヶ月まえだったと思います。
柴田:あれ、大変だったよね。軍人姿のCGモデルが欲しかったから、スキャンの際、旧ドイツ軍の軍服着てもらって。
瓶子:身体のラインのデータも欲しかったんで、タックトップにショートパンツに水泳帽みたいな、「モデルさんになんちゅー格好を!」っていう姿でもスキャンしましたしね。しかもそれが、2泊3日の強行軍だったんですよ! 最後には監督も変なテンションになっちゃって「意地でも博多ラーメンは食って帰るぞ!」とか言ってたし(笑)。
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-------なんかそれ、いわゆる普通の「設定制作」のお仕事とは、全然違いません? |
柴田:そうですね。通常、設定制作は、シナリオやデザインの発注が主な仕事になるんですが、『IGLOO』では今西さんや出渕さんがストーリーと設定を仕切っていましたから。
瓶子:むしろ私たちは、それとは違う部分をフォローする役目だったんです。その最たるものが、いま言ったような「CGを作る材料を揃える作業」だったと。もちろん、キャラクターのモデリングが出来上がったあとのモーションキャプチャーなんかも苦労の連続でしたよ。「このスタジオの広さだと、まずコレ撮ってアレ撮って……」とか、「ブリッジは2分割して撮るのが良い!」とか。ぜんぶ現場で学んでいったようなものです。
柴田:とにかく『IGLOO』は、作品の仕様そのものが「初めてづくし」ですからね。瓶子さんたちがそうやって悪戦苦闘してるあいだ、制作も喧喧諤諤でしたよ。やりたいことを並べて「これホントにできるの?」とか「予算はいくらかかるの?」とか、「スケジュールに納まるのか?」とか。
瓶子:柴田くんたちが今西さんと相談して、いざ作戦が決まったら、遂行するのが我々って感じですよね。 |
-------しかしそうなると、柴田さん的には冒険ばっかで怖くありませんでした? |
柴田:ガンダム作品で「リアルな質感のCG作品で、ジオン側が主役の1年戦争モノ」というのは初めてでしたからね。正直「これがコケたら、もうCGでガンダム作品は出来ないじゃん!」っていう怖さはありました。しかし今西監督は「いけそうだから、やってみよう!」と。もちろん私は「いや、それは危ないから!」って押しとどめなきゃいけない役目でもあるんですが(笑)、今西さんや出渕さんはじめ、クリエイターさんの情熱がすごかったんですよ。その情熱を制作側の都合で「技術的に難しいからヤメましょう」とか、「手間がかかるんでヤメましょう」とか、まして「デザインが間に合わなそうだからあきらめましょう」とかは「絶対言えないな」と(笑)。逆に周りも一丸となって「なんとかやってやろう!」っていうムードがあったから、こういう作品に仕上がったんでしょう。その想いは、フィルムにも色濃く残ってると思いますよ。 |
-------しかも、毎回クオリティは上がってますもんね。 |
中島:『黙示録0079』一話とか、ジャブローの景色がスゴかったですよね!
瓶子:雲とか水とかは、CGだとホントに難しいんです。CGのスタッフが頑張ってくれたからイイ出来になりましたけど、柴田くんたちは逆に大変だったみたいですね。現場は自分の担当しか見えてないことが多くて、しかもポジティブに暴走しがちですから、「そこ力入れてもそんなに見えないから! ほどほどにして次のカットやって!」って(笑)。
柴田:おかげでバンダイビジュアルさんは、すごくハラハラしてました(笑)。
瓶子:でも、こんなに何も言わないのも珍しいですよ。すごく信用していただいて、現場はやりやすかったです。
柴田:バンダイビジュアルの久保プロデューサーから変更の要望が来たのは、タイトルだけでしたもんね。「タイトルに『機動戦士ガンダム』の一言は絶対入れて下さい」って(笑)。
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