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打ち上げレポート



藤岡建機氏
 『MS IGLOO』スタッフインタビュー第4回は、多数のメカデザイナーが参加する本作の中でも、最若手として今後の活躍が期待される藤岡建機氏にご登場いただいた。もとからガンダムファンだったという藤岡氏は最もファンに近い立場で作品制作に参加しているといっていいだろう。そんな藤岡氏に有名メカデザイナーが集まる制作現場の雰囲気とそこから受ける大きな刺激について語ってもらった。

「MS IGLOO」の仕事をするって友達に言ったら、
最初は全然信用してもらえなかったし(笑)

――まずは、『MS IGLOO』に関わられたきっかけを教えていただけますか?
藤岡:この作品でスーパーバイザーをされている、出渕さんに声をかけていただいて参加しました。他に参加されているメカデザイナーの方々は、みなさんが僕の昔からの憧れの人たちばかりなので、未熟ながらいろいろと勉強させていただいているという感じです。スピルバーグ監督の『プライベートライアン』にアパムというドイツ語が喋れるだけで兵隊としての能力は低い伍長が出てくるんです。立場的には彼と一緒で、歴戦の強者の方々に一生懸命ついていっている感じです。

――世の中には、メカデザイナーになりたいと憧れている人が多いと思いますが、藤岡さんは、どんなキッカケでメカデザインの仕事をするようになったんですか?
藤岡:元々自分は漫画家ですので、オリジナルのロボット物や『メダロット』というゲーム企画などのメカ物マンガとそれに登場するメカデザインをしたりしてました。その一方で、カトキハジメさんが審査員をやっているという理由だけで、メディアワーク主催の『電撃ゲームイラスト大賞』のメカデザイン部門に応募して、賞をいただいたりということを経て今に至る感じです。もちろん、この仕事に就く前からガンダムシリーズが大好きで、ガンプラを買って、テレビでガンダムが放送されれば見て、ムック本が出れば買って……という感じで、ずっと追いかけていました。メカデザイナーになったきっかけは、そうした学生の頃からの蓄積の結果だと思います。
 実際にデザインのお仕事をいただくと、お金の話とかになるんですが、今西監督の作品に参加させていただいて、カトキさんや山根さん、荒巻さんや出渕さんといった尊敬していた皆様と一緒に仕事ができるなら、「お金なんかいらないから、描かせてください」って思っちゃいますね。『MS IGLOO』仕事をするって友達に言ったら、最初は全然信用してもらえなかったですし(笑)。大先輩方の中で仕事をやらせていただくのは、すごく大変なんですが、苦痛にならない大変さなので。この年になって、初めてそういった“大変”感覚があることを知れたのも貴重な経験です。

――劇中に登場するメカのデザインはどれを担当しているんですか?
藤岡:第1話で出てくる観測機、第2話のムサイのコックピットやHLV、第3話のホートルといった、メインどころではないメカのデザインを担当しています。本当に、この作品は勉強させてもらっているイメージが強くて、メインのメカデザインを担当されている方々との打ち合わせで登場するメカの話を聞いて、ストーリー上必要になってくるものをデザインするという感じです。そういった、刺激のある場で話を聞いて、「こんなメカをデザインしてほしい」と言われれば、何でもやるという感じです。とにかく、ファン半分、仕事半分というか、ファン的な思考が強い感じで一生懸命やらせていただいているといったほうがいかもしれないですね。


完成した映像を見て驚きましたし、
思わず舞い上がっちゃいましたね

――今回デザインしたメカの中で印象的なものは?
藤岡:第1話に登場する小型観測機ですね。最初は「画面にチラっとしか登場しない」と言われたのでデザインをしたら、主人公が乗り込むし、シャア専用ザクと出会うしで、完成した映像を見て驚きましたし、思わず舞い上がっちゃいましたね。

――他のメカデザイナーの方々は、ミリタリーに関してかなり詳しい知識をもっていますが、そういった部分で先輩方から具体的にアドバイスを受けたりするんですか?
藤岡:映画や本など、いろいろ見たり読んだりしておいたほうかいいということは言われますが、押しつけられる感じではないです。打ち合わせの時に、「こんなものが参考になる」というような話がでたりするので、「じゃあ、見てみようかな」という感じで。最近では『ライトスタッフ』という、宇宙開発と飛行機の音速突破が描かれた映画を、打ち合わせがきっかけで見直してみると、新たな発見がたくさんあって。それが、デザインのとっかかりになったりもしますし。だから、先生方に追いついて仕事をするためにも、自主的にそういった参考になる作品を拾って、見ていったりしていますね。

――例を挙げると、どんな資料が今回のデザインに役立ったりしていますか?
藤岡:カトキハジメさんが、『MS IGLOO』用にムサイのディティールアップをされているのですが、CGで制作する際に、表面にさらに細かいディテールを付ける必要が出てきて、そうしたディテールアップを担当したんです。コムサイは、大気圏に突入する機能を設定画に起こすのに『スペースカウボーイ』という映画でスペースシャトルが大気圏に突入するシーンの機体表面から耐熱タイルが剥がれる描写を参考にしました。また、コムサイのコックピット内の要素に関しても、スペースシャトルが出てくる映画などをたくさん見て資料として役立てたり。監督からは「お芝居をさせるから、スイッチなどはたくさんあるといいけど、無駄なものを配置してはダメ」というアドバイスをいただきました。

――いわゆる「操作しているらしさ」を表現するのに必要な要素を、実際の映像を見て理解を深めて描いたということですか?
藤岡:ロボットだけでなく、乗り物は、人間と触れ合って動くものだし、人間がいなくては存在し得ないものじゃないですか。それを繋ぐものがコクピットだとすると、それまでの自分は外観しか考えてなかったなと、改めて確認できました。それまでは、コックピットなどを描いたことがなかったので、本当に勉強になりましたね。

――今日はどうもありがとうございました。

 藤岡氏に会い、お話をお伺いした印象は”物静かな人”だった。こちらの質問に真剣に耳を傾け、よく考えてからゆっくりと話し出すその姿から、藤岡氏の真面目な人柄が伺えた。
 少年の頃からガンダム・ファンだったという藤岡氏は、『MS IGLOO』を通じて様々なものを吸収し続けている。すでに公開中の3話まででその成果を見ることが出来るし、以後製作される4話以降のフィルムには、さらに進化した”藤岡メカ”を見ることが出来ることだろう。  そういった視点で作品を見てみるのも、またいいのではないだろうか。


(C)SOTSU AGENCY / SUNRISE