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Interview

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打ち上げレポート



久保聡氏
 『MS IGLOO』DVD、遂に発売決定! これまで松戸のバンダイ・ミュージアムでしか観られなかった驚愕のフル3DCGドラマをDVDで入手出来る日が、刻一刻と近づきつつある。そこでスタッフインタビュー第7回は、クリエーターを中心にお送りしたこれまでとは若干趣向を変えて、バンダイビジュアルの久保聡氏にご登場いただいた。ガンダムの映像作品をリリースする同社のチーフプロデューサーとして幾多の作品を手がけ、本シリーズ成立にも企画当初から尽力した「ガンダムの仕掛け人」が、DVD版『MS IGLOO』普及のためにとった新たな作戦(?)や如何に!?

ミュージアムの展示を連動する
定められたトライアル・ウェイ

――まず、久保さんとガンダム、そして『MS IGLOO』の関わりからお聞かせください。
久保:現在、僕は弊社(バンダイビジュアル)でのガンダムの窓口というか総轄的な立場をさせて頂いています。ガンダム担当に就任したのが97年ですから、もう8年になりますね。それまでの担当者はどちらかというと作品単位で代わってましたから、僕は弊社でも最長最多のガンダム担当者ということになってしまいました。
 今回の『MS IGLOO』に関しては、松戸のバンダイミュージアムのオープン以前から、ミュージアム関係者の間で1周年記念を目指してミュージアムならではのオリジナル映像を提供したいという思惑があったんだそうです。ただ、せっかくの映像作品なんだから、上映しっぱなしではなくDVDなどのビデオグラムも視野に入れたいということで、我々に声がかかり、プロジェクトに参加させて頂くことになりました。
 実際、ガンダムの映像作品を生み出す=作るということはスタッフ共々大変な労力が必要なんですよ。今でこそ笑い話ですが、当初ミュージアム側は90分から2時間ぐらいの長編を希望していて、「そんなのできっこない!」と。やはり「ガンダム」と名の付く作品はサンライズにとっても特別だし、SFアニメのパイオニアでなくてはならない。それが簡単にクリアになるんだったら、毎年映画とかOVAをジャンジャン展開してますよね(笑)。そこで「30分くらいの中編映像を5〜6本、トータルで2時間強ぐらいのボリュームにしましょう」と。
 逆に全編フル3DCGという映像の制作体制に関しては、作品の方向性として早い段階から決まっていたと記憶しています。

――それはガンダム・ミュージアムの「一年戦争の架空博物館」というコンセプトも加味してのことですか?
久保:そうですね。『IGLOO』を観た後の高揚感を伴ったままミュージアムを楽しんでもらったり、その逆も可能なように、ミュージアムの世界観にリンクした作品世界っていうコンセプトから企画がスタートしたのは間違いないですから。ミュージアムに展示されている映像も、作品の中に登場しますしね。その意味では、展示との連動ありきの作品なのかもしれません。


ニッチな妄想が形になった
不健康な作品?

――作品内容のコンセプトについては?

久保:最初に井上プロデューサーや今西監督から聞いたお話の印象としては「ガンダムならではのニッチな作品なんだな」と(笑)。富野監督の小説版や『MS ERA』、『ガンダムセンチュリー』みたいに、昔からファンがまことしやかに語り継いできた作品群に連なるモノですね。あれだけ1年戦争世界が広がっていると、松本零士先生の戦場漫画シリーズのような、「名もなき兵士のドラマ」も想像できるじゃないですか。そういう意味では、ファーストガンダムの世界をしゃぶり尽くすように楽しんでたファンにとっては、待ち焦がれてた作品なんだと思います。
 もっとも、これが10年前だったら、こういう企画は一部の好きな人が妄想して楽しんでただけで、映像作品になるなんて誰も思わなかった。でも僕自身、ここ2、3年は本当にガンダムがサブカルチャー化しているなっていう実感が強いんですよ。その意味では一億総マニア時代と言うか、やっとお客さんもこういうニッチな作品を受け止められる時代になったのかもしれません。  ただこの企画の大きなミソは、はじめて全編がジオン軍側からの物語を描いた映像だったことです。だって、『仮面ライダー』だったらショッカー側から物語を描くようなもんですよ(笑)。誰もが考えはしたけど、まさかやるとは思わなかった…。そういうマニアライクでディープな妄想が、茶飲み話や同人誌ではなく映像作品として結実してるんですから、まあ誤解を恐れずに言えば、あまり健康的ではないですよね(笑)。ただ、僕にもそういうマニア志向はありますから、話を聞いたときにスッと理解できちゃったんです。

――では、制作段階では現場のクリエーターの趣向が大きく反映されているんですね?
久保:ええ。スタッフの人選から作風まで、すべて信頼した上でお任せしてました。今西監督はすでに『0083』でケレン味のある演出手腕を発揮なさってますし、CGに関してもプロフェッショナルな方ですから。
 ただ、ひとつだけ今西監督に、何度も「コレでいいんですか?」って聞ちゃったのが、『MS IGLOO』っていうタイトル。だって初期の企画書はどこを見ても『機動戦士ガンダム』っていう文字が入ってなかったんですよ!? 今西さんは「だってガンダム出てこないんだから」って言ってましたけど、プロデューサー的には「もうホントかんべんしてください」と(笑)。しかもタイトル表記は英語だけだから「IGLOO(=イグルー)」って読めるのか!?…「せめてカタカナでルビだけでも入れて下さい!」とお願いしたり、結構弱りました。バンダイビジュアルとしては、一般的にその作品がどんなジャンルに見えるかが重要なので、タイトルにはとにかくこだわりたい…もっともそれが作品のスタイルとして定着してくれればOKなんですけどね。  出来上がった作品の仕上がりには大満足です。今西監督をはじめとするスタッフの労力には大変感謝しています。もちろん他の作品でも場合によっては「うるさい!」って言われるくらい細かく言うケースもあるんですが、『IGLOO』の場合は「お任せしたほうがいいモノになる」っていう確信が肌感覚として判ってましたから…。むしろ僕らは、そのあとDVDなどのビデオグラムをどう売っていくかを考えるのが仕事だろうと。


能動的に手に入れて欲しい
ローソン限定の「マニアの証」

――では、いよいよその「DVDの売り方」について伺いたいのですが。
久保:まずバンダイミュージアム限定上映作品っていうのが、僕らにしてみると本当に扱いにくいんですよ。全国劇場公開作品のDVD化でもないし、TVで放映されたワケでもないし、かと言ってOVAのような尖がったメディアでもない。これをどう売るかは、それこそバンダイビジュアルの本領ですから徹底的に話し合ったし、今西監督にも「99.9%僕の言うこと聞いてください!」って言っちゃいました。「僕は作品について信用したんだから、売り方についての信用はしてくださいね」と。いい大人が二人で「指きり」までしちゃいましたから(笑)

――その具体的な仕掛けが、ローソンでの限定販売(第1、2巻:2月1日〜3月31日まで予約受付中)なんですね?
久保:僕は、ガンダムには新しいことにチャレンジする責任があると思っています。そのひとつの形が03年の『ガンダム イボルブ+(プラス)』のローソンさんで展開した限定販売だったワケですが、これがおかげさまで大好評だったんで「じゃあ今度はシリーズものでチャレンジしてみよう」と。それに、もともと『IGLOO』はミュージアム限定上映作品ですから、DVDもお客様が能動的にアクションをした結果として手に入れてほしかった。ショップで「好きな商品を見つけて買う」というのではなくてね。松戸のミュージアムに行ってくれた方と同じように、ローソンに行ってloppiで予約して入金した人だけが手に入れられるという、似たような匂いのする販売ルートを開拓してみたかったんです。
 この点はありがたいことに、ローソンさんでも最高の協力体制で店舗支援をして頂きました。店頭カタログの表紙はもちろん、大型ポスター、幟(のぼり)、loppi画面のスクリーンセイバーと予約処理中画面、おまけにレジの液晶画面でも『IGLOO』の告知を表示してくれています。また、店内で流れる「ほっとステーション(店内放送ラジオ)」のプログラムのなかでも、異例の2バージョンが用意できました。ギレン閣下の演説版とシャアの独白版です! もちろん銀河万丈さんと池田秀一さんに録音をお願いしました。もう劇場公開作品クラスのプロモーション体制と言っていいですね。

――それ、なにかローソン側の担当者も楽しんでらっしゃる雰囲気がありません?
久保:そうなんですよ! マーチャンダイザーご自身がガンダム世代のガンダム・ファン!!すごく熱心に取り組んで頂きました。店頭カタログのロゴも表紙のザクに合わせた緑で、質感も鋳造表現風になってるっていう凝りようですからね(笑)。もう全国8000店の「ローソン限定ガンダム祭り」みたいな状態ですよ。

――商品としてのDVDそのものは、どこが特徴になっていますか?
久保:今回はまずパッケージが前代未聞で、なんとサブタイトルがメインタイトルより大きいデザインになってるんです。

――あ! ホントだ。『MS IGLOO』のタイトル、肩に小さく入ってるだけなんですね!
久保:ええ。普通DVDのジャケットっていうのは、店頭で手にとって「カッコいい!」「コレクションに加えたい」とか、そういう印象を持たれることを一番気にしなきゃならないんですけど、今回はローソンでの予約販売で、ある意味「お持ち帰り前提」ですから。極論目立たなくていいんで、よく書籍である通好みの「ジャズの名曲100選」みたいな、そういうイメージのジャケットにしてみました。
 と言うのも今回のDVDは、むしろアイテムとして「持ってるのがウレシイ」コレクターズ・ディスクにしたかったからなんです。どんなジャンルにも、マニア同士の会話で「あの本持ってるの? 読んでるんだ!? よく勉強してるねぇ」みたい言われる一冊って、必ずあるじゃないですか。

――このDVD持ってると「ガンダムファン黒帯」みたいなものですかね(笑)
久保:そうそう。ましてこの作品は、ニッチな作風だけじゃなく、フル3DCGで一年戦争を描いた先駆け的作品です。3DCGの技術は日進月歩ですから、05年のいまだから描けるテイストで仕上げた作品とも言えるわけで、ファンの方にはそのぶんこのお祭りを思う存分楽しんで欲しいと思っています。ひょっとしたら、後にはこういう「ニッチな世界観を3DCGで描く」っていう手法が定着して、Z時代とかの作品も現れるかもしれないですが、その時に「俺はIGLOOの戦いをオンタイムで観たんだぜ!」って言ってもらえたら、それこそ「ガンダム黒帯」じゃないですか!(笑)



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