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Interview

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荒牧伸志氏x山根公利氏
 『MS IGLOO』スタッフインタビュー第2回は、メカデザイン特集。主人公たちが乗り組む試験支援艦ヨーツンヘイムのデザインした荒牧伸志氏、第1話『大蛇はルウムに消えた』に登場する艦隊決戦砲ヨルムンガンドのデザインを担当したメカニックデザイナーの山根公利氏を迎えてお送りする豪華版。『MS IGLOO』で描かれた独特の”宇宙世紀メカデザイン”の秘密を探る!

ヨーツンヘイムは“青函連絡船”?
ヨルムンガンドは“ムカデ砲”??

――荒牧さんは、主人公のオリヴァー・マイたちが乗る試験支援艦ヨーツンヘイムのデザインを担当されています。それまでの”ジオン艦”のイメージからはかなり違った印象を受けますが、どのような形でデザインの依頼を受けたのですか?

荒牧:ヨーツンヘイムは、もともと民間の連絡船がジオン軍に徴用されたという背景を持ち、巨大な貨物船というか、大きな格納庫を持った特殊な形状の艦船という設定を先にうかがっていました。劇中では艦橋や格納庫の内部も細かく描かれるということで、艦の形だけでなく、中身も含めてデザインをしてほしいとのことでした。また、話数を追うごとに新しい機能や任務に応じた装備も少しずつ加わっていくということで、そうした変化も含めてデザインをするというものでした。
 最初は、ジオンの輸送艦、パプアなんかをベースにデザインを考えてみたのですが、今西監督から「イメージは、昔の青函連絡船の羊諦丸なんだよね」と言われて。この船は今でもお台場の船の科学館に展示船として残っているんですが、列車をそのまま船体に格納することができるんですね。だから、「テーマは線路です」ということも言われました。そこで、前から後ろに筒抜けになるような大きな格納庫を2つ付けて、もともとは連絡船だったのを強引に軍艦にした雰囲気を出してみました。だから、砲塔や艦橋脇のサブエンジンも無理矢理付けた感じのデザインにしています。
 また、それだけだとつまらないので、格納庫を縦回転させるレールを付けて、他のメカに比べると鈍くさいけど、味のある雰囲気にしたつもりです。艦橋の位置なんかも、軍艦ならもっと後方で、攻撃的なイメージがあると思うのですが、民間の徴用船ということで、船体の先に付いているといった、普通の軍艦とは違ったイメージにしようと心がけましたね。

――山根さんが担当された、第1話『大蛇はルウムに消えた』に登場するヨルムンガンドのデザイン発注を受けた際には、どのようなオーダーがあったのですか?

山根:サンライズ企画室の井上さんから呼ばれて会議に参加して「大砲をデザインしてほしい……それもムカデ砲を」と言われまして。「ムカデ砲って、ドイツ軍のアレですか?」と話はすぐに理解しました(注 ムカデ砲とは第二次大戦中にドイツ軍が計画した長距離砲で、砲身に多数の薬室を設けて火薬を爆発させることで砲弾を加速させる大砲。大規模なものでは砲身長150m射程距離300kmというものもあった)。
 SF考証を担当されている永瀬唯さんから、「核爆発を使ったプラズマ砲」ということと、ムカデ砲だからたくさんの枝が付いていて、これがブースターの役目を果たすという説明を受けました。監督からは射撃するための照準機としての測距儀が欲しいという要望もありましたので、密度感のあるコントロール台を設置したりと、発注された時点で大体のイメージは出来上がったので、あとはどんな機能を加えて説得力を出すかが課題でしたね。
 例えば冷却装置が必要だろうということで、本体とは別に冷却用の液体金属を搭載したボンベを周りに並べておこうなどと、様々なことを考えながら作業しましたが、ヨーツンヘイムに収納しなければならないという条件があったので、コンテナに入るように4つに分割する方式にしました。砲身の周りにあるフレームは、分割収納するときに、互いの砲塔が干渉しないためのバンパーのような役割があります。実は劇中には登場しませんでしたが、モビルスーツが運ぶ時には移動時につかむバーにもなるなどとも考えてみたりしましたね。

3DCGならではの“正確な対比”と
“アナクロな雰囲気”のデザイン

――今回のお二人がメカニックデザインとしてやられた兵器は、今までのガンダム作品では登場したことのないデザインですが、そこで苦労された点や逆に楽しめた点はどういったところですか?
山根:いわゆる”ガンダム文脈”から外れているところが、今回の『MS IGLOO』というシリーズの面白いところですよね。そうした企画意図というか、ガンダム作品の新しい試みがすごく魅力的で。実は、仕事を頼まれた当時は、すごく忙しい時だったんですが、作品の意図を聞いてぜひやらせてもらいたいと思いましたね。
荒牧:僕も当時のスケジュールを振り返ると、忙しい時と重なっていて、「よくあの時にやれたな」という感じですね。悩んだ点といえば、ジオン軍の兵器らしさを出しつつ、元が連絡船という設定とマッチさせるかという点ですね。ジオン軍の艦船のデザインラインってあるじゃないですか。
――:船首の部分なんかは、そういったイメージを出しているんですか?
荒牧:そんなに意識はしていないですけど、船首の部分を見て出渕さんが「これ、チベみたいだね」と言ってくれたのでそれだったらOKだなと。
山根:さすが、スーパーバイザーですね(笑)。
荒牧:ガンダムという作品は、デザイン文脈がすでにできあがってる作品なので、その中に「あってもおかしくない」という存在になるように気をつけました。
山根:ヨルムンガンドでは、先ほども言った液体金属で冷却するということを考えた時に、どうすれば効率良く冷却できるか悩んで、最後の全体のフォルムを決定する時に砲身の横に冷却用のパイプを這わせるようにしたんです。それがザクの動力パイプに近いイメージになって、機能としての理屈から考えたディテールなんだけど、結果的にジオンの兵器としての共通項になったので良かったですね。あと、むき出しのコントロール台もジオンっぽいかな。

――今回のメカニックデザイン作業で気を使われたところはどこですか?
荒牧:やはり、気を使ったのは3DCGの映像であることですね。今回は、ある程度のプロポーションが決まった段階で、3DCGのモデルを自分で制作して内部の空間がどれくらいとれるかを検証しています。完成映像が3Dで作られるものなので、デザイン段階で比率を間違ってしまうとあとで大変なことになってしまいますから、その点はすごくこだわりました。そういうウソを付けない部分は大変ですが、格納庫とモビルスーツの対比や、ブリッジとの人間の対比などスケール感が確認できてしまえば、それに合わせた付属品を付けていったりできるので、逆にデザイン作業は楽になりますね。
山根:対比という点では、コントロール台そのものがひとつの船という感じと、最低限の装甲しかない自走砲の戦闘室のイメージを合わせて出せればと思ってデザインしています。そうなると、人との対比も重要になってきますね。その他の細かい点では、ドイツ軍の対戦車砲的なイメージとか、昔の戦車にあった射撃手用の肩当てを付けるとか。”アナクロな雰囲気”が今回の作品のテーマだと思っているので、そんなイメージをデザインから伝えられたらなと、こだわってみましたね。
荒牧:そういう部分はありますよね。ヨーツンヘイムのドンくさい雰囲気というのも、アナクロなイメージに近いですしね。
山根:昔からガンダムで、もっとハードな戦争映画的なものをやりたいなという意見は意外とよく耳にします。今回はそれに近いものが、それもかなり”アナクロな雰囲気”が伝わる作品になったんじゃないですかね。
荒牧:話も含めて、そういったところをデザインと一緒に楽しんでもらえるといいですね。



(C)SOTSU AGENCY / SUNRISE