庵野:その通りですね。僕自身に関して言えば、もともとのガンダムが持ってた「ムチャクチャさ」が、すごく好きなんですよ。巨大ロボットものからリアルロボットものに移行する最初の作品ですから、実はよくよく観ると、世界観もぐちゃぐちゃでなんの整合性もなかったりするじゃないですか。だって、マゼラアタックとか「砲身だけ飛ぶんなら下は要らないじゃん!」って(笑)。でも僕は、Gアーマーとかすごく好き。ガンタンクが宇宙を飛ぼうが、ヤラレメカが毎週出てくるスーパーロボットのノリを引き摺ってようが、なんとかリアルにしようともがいてる、あのカオスな感じがたまらないんですね。そこをリアル一辺倒に考えて、「ジオンのどこにあんなにMSを作る国力あるんだ?」とか考え始めちゃうと、途端に魅力半減と感じます。「本気マジメにやってるんだけどムチャクチャ」っていうのが、ファーストの面白かったところで最大の魅力でもあると思います。
『IGLOO』がスゴイのも、一見ミリタリズム全開に見えて、ちゃんとそこを解って作ってるからだと思うんです。カトキくんにしても、ヒルドルブをただの戦車にしないで、あくまでザクの延長にしてる。だからこそ、あれが両手にザクマシンガンを持った瞬間、「お見事!」と感じるわけです(笑)。ゼーゴックにしても同じで、カバーが一個外れなくて困ったときに、ちゃんとズゴックの手を使って破壊してるのがいいんですよ。リアル一辺倒で考えたら、ズゴックを流用するにしたって手は要らないハズなんですけど、そこのこだわりがいい。ファーストガンダムも、ビグザムの対空防御が足の爪ですから、そのバランスにすごく魅力を感じます。いい歳をしたオジサンが、大マジメに「対空防御!」って言ってるどうしようもない部分の持つ面白さです。やはり、あそこで普通のミサイルが飛んでたら、現在に残る古典名作となりえたか、はなはだ疑問です。本シリーズは、そういう面白さを解ったうえで、ガチガチのミリタリーに大マジメに振りながらも本来のバカバカシさを残してあるのが素晴らしいですね。愛情もって、ギリギリのいいポジションを狙っているから面白いと思います。
やっぱり『IGLOO』は、単なる「お仕事」じゃないですよ。趣味が遠慮なく反映されてるのが商品価値になってるし、作品の魅力だと思います。いや、いい感じですよね。極めて、グーです。